Japanese
English
講座 心電図シリーズ(2)
心房波
The P Waves.
佐野 豊美
1
Toyomi Sano
1
1東京医科歯科大学,心臓血管病研究所
1Clinical Physiology and Medicine, Institute for Cardiovascular Diseases, Tokyo Medical and Dental University.
pp.99-107
発行日 1965年2月15日
Published Date 1965/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201411
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.正常P波
従来洞結節より出た興奮波は,あたかも池に小石を投じたときに生じる漣のごとく,放線状に一様に心房を伝わってゆくといわれ,洞結節と田原結節を結ぶ特殊伝導系は存在しないとするのが一般の考えであった。これに対し私どもは兎の心臓に関する微小電極研究から必ずしもそうとは考えていない。洞結節は分界稜から1〜2粍上大静脈の内にあり,右房の内側から上を見上げるようにして見ると,上下大静脈の両開口部を囲繞して,分界稜とその延長が輪状構造をしている。洞結節より出発した興奮波がいったんこの輪状構造に上陸すると,これに沿い,上陸地点から二つの正反対の方向に分れて伝わる。この上陸地点からほぼ正反対の位置にある田原結節に向って,二つに分れた興奮波のどちらが早く達するかは走行距離もほぼ等しく,興奮波到達時間も同じようで仲々きめがたいが,私ども1)の切断実験の結果からは,下大静脈開口部をめぐる方が一寸早いようである。輪状構造の内部は興奮伝導の遅い組織で,ことに洞結節の背後と一側はほとんど興奮波が通らない。以上の結果は高安ら2),豊島ら3),James4)などと一致する点も異なる点もあるが,大綱においては同系列の考えで,一様な放線状伝播と考えない意味では皆一致している。
Copyright © 1965, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.