Japanese
English
綜説
房室伝導に関する最近の知見
Recent Concept of Atrio-Ventricular Conduction
佐野 豊美
1
Toyomi Sano
1
1東京医科歯科大学心臓血管病研究施設
1Institute for Cardiovascular Diseases, Tokyo Medical and Dental University
pp.109-120
発行日 1972年2月15日
Published Date 1972/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202350
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Ⅰ.微小電極法とヒス束心電図法
房室伝導は心房より心室へ血液を送るべく最初に発現する機構であるが,両者間を結ぶほぼ唯一の連絡路であるため,その機能がしばしば侵され易いものとして,臨床的には昔から注目され,基礎面からもその特殊な機能のため古くから研究されてきた。その研究の手法は大部分,臨床はもちろん,動物実験の場合も心電図を用いたものであった。したがって多くはP波とQRS群との時間関係より房室伝導をひとまとめにして類推したに過ぎなかったが,臨床心電図の豊富な資料と,多数の心電図学者の熱心な分析により,非常に多くのことが類推されてきた。その注目すべき性質の大部分は田原結節,すなわち房室結節の性質に帰せられたことは当然のなりゆきと考えられる。
ところが最近十数年間に房室伝導の知識は画期的に一新されたと言ってもよかろう。その理由は第1には微小電極法が登場して,神経・骨格筋などの他の興奮性細胞および心筋他部の細胞と同様,この部にも応用されたからにほかならない1)2)3)。今まで房室伝導全体から各部を類推するほかなかったのが,各細胞単位の知見がえられるようになったのであるから,類推の当否を実証的に調べることができるようになったのである。
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