講座 臨床から公衆衛生へ
一酸化炭素中毒
牛尾 耕一
1
1東京労災病院
pp.134-136
発行日 1980年2月15日
Published Date 1980/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206031
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疫学的実態■
わが国の昭和45年の一酸化炭素(CO)中毒死1)は,同年の「薬用」を主としない物質による死亡4,973名の56.4%,2,805名を占めている.その後,49年2)の3,460名,50年3)の3,800名,51年4)の3,598名,52年5)の3,563名,53年6)の3,434と推移している.そのうち,偶発的なCO中毒死は45年の統計では749名で,全CO中毒死の26.7%に当たる.原因別では,家庭用燃料の不完全燃焼,都市ガスによるものがそれぞれ49.3%,43.4%であり,自動車の排気ガス,その他によるものが少数ある.発生場所としては家庭内が77.4%,580名と断然多い.
偶発的CO中毒死以外は何によるものか.職業性CO中毒は三井三池炭鉱の大災害を除くと意外にわずかである.労働省の統計では49年7)には16名発症し,うち7名が死亡.53年8)はそれぞれ40名,4名であった.こうしてみると,残りは自殺目的のCO中毒死と考えられる.事実,昭和49年の自殺死亡統計9)では,自殺者総数19,105名中,家庭用ガス,その他のガスによるものがそれぞれ2,112名,665名の計2,772名で,同年の全CO中毒死の80.1%に当たることからうなずけよう.
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