ご存知でしようが
一酸化炭素中毒
横井 晋
1
1群馬大学精神神経科
pp.1206
発行日 1976年11月1日
Published Date 1976/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203968
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文化社会となつて都市ガスの使用はますます増加している。以前の如く炭火による中毒は減じているとはいえ,田舎では豆炭コタツは可成り使われており,それら使用の際の不注意による中毒,或いは自殺の目的によるもの,さらに自動市排気ガスによる中毒の数は決して減じていない。救急患者としてしばしば運び込まれてくる。
急性一酸化炭素中毒はCOヘモグロビンによる(O2欠乏のための)一種の中毒であり,CO,0.1%の濃度で2〜3時間で死亡する。発見されるまでの昏睡時間がその後の予後決定の重要因子である。急性非間歇型中毒で死亡した例の脳では大脳の著しい充血と淡蒼球の壊死が起つている。従来の治療は酸素吸入,輸血,輸液,感染予防等の措置であり必ずしも成功するとは限らない。つぎに間歇型と呼ばれている例は昏睡状態が自然に,又は処置により一旦意識が回復し,時には清明となり仕事まで始めた人が,数日ないし十数日後に記銘,記憶障害に始まつて錯乱,譫妄状態から急速に失外套症状群に陥入るものや,しだいに失見当,健忘を示しさらに失行失認,パーキンソン症候群を呈しながら痴呆に陥入つてゆく症例のあることは周知の如くである。このような患者は従来の各種治療を如何に強力に行つても痴呆化は進み,数カ月後には除脳強直状態に陥入つて死亡するのを傍観していなければならないのが通例であつた。このような間歇型CO中毒の脳では大脳白質全般に亘る著しい髄鞘崩壊と大量の脂肪顆粒出現があり,これに対して皮質神経細胞は殆んど侵されていない組織像がみられる。
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