Japanese
English
綜説
腦循環の化学的調節機序
Mechanism of Chemical Control on Cerebral Circulation
田崎 義昭
1
,
後藤 文男
2,3
Yoshiaki Tazaki
1
,
Fumio Gotoh
2,3
1慶応大学内科学教室
2慶大内科
3Wayne大学神経科
1Dept. of Internal Medicine, School of Medicine, Keio University.
2Keio University.
3Wayne State University
pp.586-595
発行日 1962年9月15日
Published Date 1962/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201126
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I.はじめに
近年N2O法をはじめ,種々な脳循環測定法が臨床的に用いられ,脳循環障害の実体が定量的に把握されるようになつた1)。一方脳循環の生理及び病態についての研究が進むとともに,種々な因子が脳循環に影響することが明らかにされ,臨床的測定値より脳循環の病態を解明するにはこれら諸因子についての慎重な検討が必要となつた2)。脳循環に影響する諸因子は理論的には脳動静脈血圧差と脳血管抵抗とに分けられる3)。脳血管抵抗は脳血流の「流れ易さ」に作用する諸因子により影響され,これらは血液粘稠度,頭蓋内圧,脳血管の器質的変化及び脳血管のtoneの変動である。脳血管のtoneは化学的因子,神経性因子,局所的代謝要求,諸種薬剤およびホルモンにより調節される。このうち生理的にも病態的にも最も変動し易く,かつ脳循環に著しい影響をもたらすものは化学的因子である。従来化学的因子のうちで脳循環との関連が検討されたものは,動脈血O2,CO2およびpHであり,最も強力な作用を呈するものは動脈血CO2分圧とされている4)5)6)7)。しかしながらかかるCO2分圧が如何なる機序で脳循環を調節するか未だ全く明らかにされていない。
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