Japanese
English
綜説
腦代謝の動的観察とCO2 narcosis
Dynamic Investigation of Cerebral Metabolism and CO2 narcosis.
後藤 文男
1
,
田崎 義昭
1
Fumio Gotoh
1
,
Yoshiaki Tazaki
1
1慶大相沢内科
1Dep. of Internal Medicine, Keio Univ.
pp.4-16
発行日 1962年1月15日
Published Date 1962/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201053
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I.はじめに
高濃度の炭酸ガスに麻酔作用のあることは古くから知られていた1)事実であるが,"CO2 narcosis"あるいは"CO2-intoxication"が一つの症候群として論義されるようになつたのは比較的最近31)のことである。何かの原因で身体内に炭酸ガスが蓄積すると,頭痛,振せん,痙攣,傾眠,昏睡,乳頭浮腫,髄圧亢進などの神経症状を呈し,遂には呼吸抑制,循環障害をきたし死亡する。CO2 narcosisは,このように神経症状を主とする臨床症候群であり,その大部分は中枢神経系の異常に基くものである。しかしながら,従来CO2narcosisに関する研究は,主として呼吸生理学的立場,あるいは血液化学的立場よりのものが多く,脳代謝の面よりこれを取り上げたものは極めて少い29)。その理由は,一つには,CO2 narcosisの原因は大部分呼吸不全によることから,その呼吸不全を起す病態生理学的機序が重視されたこと,第二には,脳代謝を動的に把握する適当な方法がなかつたことによる。
CO2 narcosisの治療という実際的な臨床的立場に立つても,いかにしてCO2が体内に蓄積するかという機序が重要であると同様に,蓄積したCO2がいかなる機序で脳の代謝あるいは機能に障害を与えて症状を呈するかという問題も重要であろう。
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