綜説
腦循環に就て
中澤 與四郞
1
,
岳中 典男
1
1長崎醫科大學醫學部藥理學教室
pp.50-56
発行日 1952年10月15日
Published Date 1952/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905672
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はしがき
生體の最も精密な臟器の榮養を司る腦循環の異状は腦自體のみならず生體の種々機能に異變を及ぼす故,古來多くの解剖學者,生理學者,病理學者及臨床醫學者によつて興味あり且つ重要な研究課題として取上げられて來た。腦循環系の形態に就ては特異な状態が漸次闡明せられたが,その機能に關してはすべて全身循環の影響下にありと考えられていた。然るに1928年Wiggers等により頸部交感神經刺戟により頭頂部軟腦膜血管の收縮が證明せられるに及んで,腦血管の神經支配に關する研究が盛んに行われ,多くの要因により腦循環自體が影響せられることが判つた。然し之等の成績は必ずしも一致したものではなかつた。その理由としては,(1)腦血管の形態が生體の他の部位に於けるものと甚だしく趣を異にし且つそれに應じて血液循環の經路が異ること,(2)人及動物の種類により甚しく相違すること,(3)實驗の困難なること及び種々異る方法を以て實施せられたことが擧げられよう。
腦循環の研究が米國に於てSchmidt1)2),Kety5),Wolff4)等により,一大進展を齎したのは今次大戰であつた。この研究は主として,40,000呎以上の高度飛行に於て乘員の使用する加壓呼吸裝置を持續的にするか,間歇的にするかの問題を決定すること及び打撲性ショックの患者を治療する方法を探求することを目的として強く要請されたのである。
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