今月の主題 アレルギーの現況
基礎知識
レアギン産生の調節機序
高津 聖志
1
Kiyoshi TAKATSU
1
1大阪大学医学部癌研究施設・腫瘍発生学教室
pp.998-1002
発行日 1980年7月10日
Published Date 1980/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216579
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はじめに
喘息やじん麻疹,あるいはペニシリンアレルギーなどに代表される即時型アレルギーは,レアギン(IgE)抗体によって惹き起こされる.ブタクサ花粉が体内に侵入した場合,それに反応するレアギン抗体を産生する人はアレルギーになるし,産生しない人はアレルギーになりにくいといわれる.したがってレアギン抗体の産生を抑制,停止できればアレルギーの発症を防ぎ,あるいはアレルギーを治療できるかもしれない.
レアギン抗体の産生を効果的に抑制するには,その産生機構を明らかにし,いかなる調節機構が存在しているか知らなければならない.1960年代後半からの免疫生物学の著しい進歩により,蛋白抗原に対するIgM, IgG抗体産生の細胞性機構の全貌が明らかにされようとしている.機能を異にする2種類の細胞--T細胞とB細胞--の協同作業により抗体産生が誘導されるが,T細胞中にはB細胞の分化に促進的に働く細胞群(ヘルパーT細胞;Th)のみならず,抗体産生に抑制的に作用する細胞群(サプレッサーT細胞;Ts)も存在する.レアギン産生の抑制を考える際,Tsの誘導が重大な鍵を握ることになる.ここではレアギン産生に関与するB細胞,T細胞,および両者の相互作用に関し最近の知見を述べてみたい.
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