巻頭言
Physiotherapyに関する認識とPhysiotherapistの養成について
加納 保之
1,2
1慶応大学外科
2国立療養所村松晴嵐荘
pp.585
発行日 1962年9月15日
Published Date 1962/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201125
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ここ1〜2年来胸部疾患関係の学会でいわゆる肺機能訓練療法乃至それに類似の名称のもとに胸部手術後の呼吸練習や体操等が恢復に及ぼす影響についての研究を散見するようになつてきた。これらはあらためて述べるまでもなくphysiothera—pyあるいはphysical therapyの一部をなすものであり,その効果についてはいまことあたらしく諜々するまでもないであろう。
化学療法剤出現以前の時代では肺結核外科においても手術後には一般に厳格に安静が要求せられたのであり,今日注目されている早期起床などは考慮のそとにあつたものである。したがつて胸部手術後には上肢の機能障碍や躯幹の変形や呼吸機能の低下を来し,はなはだしく作業能力が低下するのもやむをえないことであると思いこまれていた。その時代に筆者は胸部手術の翌日から上肢運動や深呼吸を行わせ,それが全身的諸機能の恢復に著効のあることを説いたのであるがしかし一般には理解されるに至らなかつた。それは学問として体系づけ,方法として組織だてなかつたことにも責任があるのであろうが,かたくなに耳を傾けなかつたがわにも責任なしとはいえない。
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