Japanese
English
綜説
特発性心肥大症の病理
A pathological consideration on idiopathic cardiac hypertrophy.
岡田 了三
1
Ryozo Okada
1
1東京大学医学部上田内科
1Department of Internal Medicine, Tokyo University
pp.313-321
発行日 1961年5月15日
Published Date 1961/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200979
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特発性心肥大症はJosserand, Gallavardin(1901)の報告以来,約半世紀間に主としてアメリカ・イギリス・フランスなどから約100例1〜22)の剖検例が報告されている。臨床的には原因不明の心肥大を呈して比較的急速に心不全症状が悪化して死亡し2,9,23),時に家族的発生19)も証明される。剖検上は心筋の原因不明の肥大が主徴で,弁膜疾患・リウマチ・梅毒・種々の感染症または中毒による心筋炎・冠状動脈疾患・高血圧・栄養障害・ビタミン欠乏症・貧血・内分泌異常・呼吸器疾患・心膜炎・心内膜炎・先天性奇型などが病因として否定された場合に4,7,10),特発性心肥大症1,12,14〜17)・原因不明の心筋疾患2,3,10,13)・原因不明の心肥大症5,7,11)・心肥大をともなう心筋変性症4)・家族性心肥大症19)などと呼ばれて来たわけである。ところがこの名称が,臨床的にも病理学的にも使いやすいことから広く愛用されるにつれて,次第に種々の異質な心疾患をその中に包括する結果となり,今日かなりの混乱がおこつている17,21)。これは,一つには今世紀前半の目覚しい医学の進歩が,従来不明であつた心筋内代謝過程を次第に朋らかにし,一方診断技術の進歩は種々の心疾患の生前診断を可能にしつつあるために特発性心肥大症と綜括されていた疾患群より,いくつかの新しい疾患単位が誕生したこと24)とも関連している。
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