Japanese
English
綜説
特発性心肥大症の臨床
Idiopathic cardiac hypertrophy.
大鈴 弘文
1
OHSUZU HIROBUMI
1
1東京警察病院内科
1Medical clinic of the Tokyo Metoropolitan Police Hospital.
pp.323-327
発行日 1961年5月15日
Published Date 1961/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200981
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I.特発性心肥大症と家族性巨大
既知の心疾患の症状てはなく,また既に知られている心肥大を来すべき原因がないのに心肥大を主徴とする疾患を特発性心肥大症といつている (Friedberg1))。臨床的に心肥大を証明し,病理解剖で心肥大を確認しながら,肥大機転の説明できない症例については,既に前世紀の末Simonds2)によつて報告され今世紀にJosserand et Galla—vardin3)以来,最近Spodick a. Littmann4)の自験例に至るまで,世界文献で80例に及ぶものである。しかし我国では甚だ少なく,著者5)及吉良6)の報告のみであつた。厳密に云えば,心肥大は病理解剖によつて確実にし得る異常であつて,臨床的には打診上心濁音界拡大または胸部レントゲン像中央陰影の拡大があつても必ずしも心肥大と速断はできない。心室拡張,心嚢内液の貯留,縦隔洞または心の腫瘍等中央陰拡大に与る因子は他に多い。諸検査から心容量増大が心肥大(心室筋肥大)に基くものであることが確実になつたとしても心弁膜症,冠動脈疾患,心筋炎,先天性心畸型等の心肥大の原因疾患がないということは病理解剖によらなければ断言できないし,グリコーゲン貯留疾患(v. Gierkes disease),心臓血管膠原病,心内膜線維弾性症,心筋線維症などの所見の有無もまた形態学的研究によらなければ,明かにできない。
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