巻頭言
ストレスと心臓病
明石 嘉浩
1
1聖マリアンナ医科大学循環器内科
pp.823
発行日 2014年9月15日
Published Date 2014/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404102558
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心疾患を捉えるために様々な負荷試験が考案され,既に確立されている.どのような方法であれ,共通点は心臓に負荷,つまりはストレスをかけることである.約20年前,負荷試験の奥深さも理解しないまま,運動心臓病学の第一人者であられた村山正博先生の教室に入ることを決意した.大学院生時代,心肺運動負荷試験を積極的に行っていた伊東春樹先生の下で,学位論文のデータを取得させて頂き,医学博士を取得することができた.この時から,ストレスと心臓病の世界に入り込むこととなった.
循環器疾患の代表は,言わずもがな,虚血性心疾患である.急性冠症候群は別として,隠れた冠疾患を検出するfirst lineに運動負荷試験がある.心電図異常精査やBruceプロトコールでstage Ⅱをクリアできるか否か,心疾患の有無にかかわらず,周術期の運動耐容能評価としても広く用いられている.症候限界性の運動負荷試験が施行できれば,Dukes Treadmill Scoreを用いてイベント発生率を予め計算することもできる.非侵襲的な検査ゆえ,結果の解釈が要求されるが,診断へのこだわりが内科医としての醍醐味である.現代の循環器医療のなかで,冠動脈CTの件数は右肩上がりなのに対し,運動負荷試験の施行件数が低下していることは甚だ残念である.超高齢化社会であるために,様々な要因で検査台に上がることができない現実もある.最高酸素摂取量は,心移植の適応決定における指標として,値が変わることなく未だに受け継がれている.次世代の良医育成において,心電図に対する解釈を深める絶好の機会ゆえ,運動負荷試験を絶やしてはならないと考える.
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