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2月も過ぎ,今年度もあと1カ月で終わろうとしている.自身はといえば,昨年4月に20数年ぶりに母校に復帰し,久方ぶりとなる大学での生活となる.受け持つ診療科は,呼吸器・アレルギー内科であり,これまで呼吸器疾患とはいえど,研修医時代を除いたほとんどを肺がんの診療,研究に費やしてきた身にとっては,ほぼ新規の領域が多く,主宰する立場としては不安を感じながらも(頼りない教授で医局員には申し訳ないと思っている),新しい知識が染み込むような感覚に,日々わくわくしながら過ごしている.
さて,呼吸器疾患全体の診療を考えるようになって,まず驚愕したのがその死亡率の高さであった.私が専門としている肺がんは,日本人の1番の死因である悪性腫瘍の中でも死亡率がトップであることより,その死亡率の高さを疾患の重要性の一つとして主張し続けてきた.では,呼吸器疾患はどうか? 2011年の厚生労働省人口動態調査では肺炎が死亡率の3位でありCOPDは9位であった.日本人の死亡原因トップ10には,老衰,不慮の事故,自殺が含まれているが,それらを除いた7つの疾病の中で,呼吸器疾患は,肺がんがトップ死因である悪性腫瘍も含めると,3つも占めることになる.また,1995年以来死亡率が増加している5疾患の中でも,これら3種類(悪性腫瘍を含む)の呼吸器疾患が含まれている.前述のように,その死亡率の高さを論拠として,肺がん診療の重要性を訴えていたが,その視点を呼吸器診療に変えてみると,同じ論点から呼吸器疾患の診療の重要性を鑑みることができる.今まで,肺癌以外の呼吸器疾患については,正直ほぼ気にすることがなかったが,死亡率という点から見ても肺癌と同様に他の呼吸器疾患も重要であることがいまさらながら認知した次第である.まさに,立場によって見える風景が違ってくるということが,この年齢になって真に実感できたように思う.
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