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特集 COPD治療のさらなる展開を目指す―ガイドライン第4版を巡って
COPDと喘息のオーバーラップを分子レベルから探る
The Search for Common Pathogenesis Underlying Asthma and COPD
檜澤 伸之
1
Nobuyuki Hizawa
1
1筑波大学医学医療系呼吸器内科
1Department of Pulmonary Medicine, Faculty of Medicine, University of Tsukuba
pp.148-153
発行日 2014年2月15日
Published Date 2014/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404102406
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はじめに
喘息とCOPDはいずれも単一の疾患ではなく,多様な分子病態を内包し種々の臨床的表現型(phenotype)からなる症候群である.個々の患者が同一の薬剤に均一に反応するわけではなく,喘息やCOPDをあたかも一つの疾患として扱って得られた大規模臨床試験の結果に基づいて,画一的な治療を勧めていくことには自ずと限界がある.特にphenotypeの違いが疾患の進展,重症度や治療に対する反応性の違いに大きな影響を与える場合には,それらのphenotypeを考慮に入れた診断や治療の構築が重要となる.
COPDと喘息の診断を同時に満たす症例が存在する.例えばCOPDの診断基準を満たす症例(気管支拡張薬吸入後の1秒率<70%)で,発作性の呼吸困難や喘息の既往,アトピー素因,有意な気道可逆性などがみられる場合にはオーバーラップ症候群が疑われる.これまでに複数の報告がオーバーラップ症候群の定義を提唱しているが,Marshらは気流制限の可逆性や喘鳴などの典型的な症状から喘息の有無を判断した場合には50歳以上のCOPD患者の50%以上にオーバーラップ症候群が存在することを報告している1).一方でこのような患者は喫煙歴を有することから喘息の臨床試験からは除外され,気流制限の可逆性が存在することからCOPDの臨床試験からも除外され,その病態や治療に関する科学的なエビデンスは極めて乏しい.
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