連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・221
時代の“変化”と“無変化”への感慨
柳田 邦男
pp.720-721
発行日 2025年8月10日
Published Date 2025/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.091713550350080720
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かつてアメリカでは,スクールバスと言えば黄色だった。この絵本の表紙には,登校する女の子が本などをかかえて,到着したスクールバスのドアが開くのを待っている風景が描かれている。バスの窓からは,すでに乗っている子らが見えている。開拓時代はすでに過ぎているだろう。
最初の見開き頁には,丘陵地の辺りを流れる川沿いに住宅街や牧草地の広がっている風景が俯瞰図のように描かれ,まち並みの一角を黄色いバスが走っているのが小さく見えている。この俯瞰図だけで,《ああ,アメリカの開拓時代の面影を残す中西部か中南部の村が舞台の物語だな》とわかってくる。全体の風景をモノクロの鉛筆と木炭で描いている中に,小さいながら黄色でバスの存在を浮かび上がらせているので,バスがどんな意味を持った存在なのか,興味を引かれる。
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