特集 変化を迫られる病院
変化の背景
紀伊國 献三
1
1筑波大学社会医学系
pp.23-26
発行日 1979年1月1日
Published Date 1979/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206748
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- サイト内被引用
あるべき姿を求めて
現代を特徴づける言葉を「変化の時代」という.われわれの周りを見回してみても,変化は急速に起りつつある.このことをとらえて,現代を「不確実性の時代」というはやり言葉もみられている.たしかに「一寸先は闇」という言葉がぴったりするほど,われわれの周辺の変化は著しく,その方向を予測することは困難である.
医療の世界,病院の世界においても,この変化は著しい,そして,あるべき医療,あるべき病院の方向について多くの議論がなされている.奇妙なことに,病院の目指すべき方向,医療の目指すべき方向については,多くの場合一致しているといえよう.すなわち疾病の減少,医療関係諸科学の研究の促進,進歩した技術の一刻も早く必要とする者への適用,不必要なケア・不必要な医療の防止,コストの上昇への対策,品質の確保,患者の医療システムへの導入の交通整理などである.つまり総論については,これから行われるべき医療の方向についてのコンセンサスはほぼ得られている.ただ問題は,それについての解決方法がどのようなものなのかである.いわば総論賛成,各論反対はこの場においてもみられている.特に変化に対してある種の統制が必要であるかどうかについて,意見が分かれている.昨年(1978年),大阪で行われた日本病院会学会においてもある種のコントロールは避けられないという見方と,それが直ちに官僚統制になるのではないかという危惧が強く表明されていた.
Copyright © 1979, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.