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はじめに
肺血栓塞栓症は,高齢社会の到来,食生活の欧米化,診断率の向上といった様々な要因により,わが国においても増加してきている.とりわけ急性肺血栓塞栓症は,死亡率が高く,死亡は発症後早期に多い.それゆえ,本疾患を疑った場合は,できるだけ早急に診断するように心がけるべきである1).しかし,症状,理学所見,一般検査では特異的な所見がないため,診断に難渋することが少なくない.画像検査により本疾患の確定診断が行われるため,画像診断が果たす役割は極めて大きい.しかも,基礎疾患の有無にかかわらず,ほとんどの診療科の医師が,外来および入院診療のなかで遭遇することが稀ではないことから,臨床医にとって本疾患の画像診断に関する知識は必須ともいえる.
急性肺血栓塞栓症は,静脈,心臓内で形成された血栓が遊離して,急激に肺血管を閉塞することによって生じる疾患であり,その塞栓源の約90%以上は,下肢あるいは骨盤内静脈である1).一方,慢性肺血栓塞栓症は,器質化血栓により肺動脈が慢性閉塞することにより発症する.わが国では,6カ月以上にわたって肺血流分布ならびに肺循環動態の異常が大きく変化しない病態を慢性と定義されている.本稿では,急性および慢性肺血栓塞栓症の画像診断について,日本循環器学会など複数の学会から合同で提唱されている「循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008年度合同研究班報告):肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン(2009年改訂版)」1),および日本医学放射線学会から出されている「静脈血栓塞栓症の画像診断ガイドライン2007年版」2)の2つのガイドラインに基づいて概説する.
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