Japanese
English
綜説
肺胞II型上皮細胞,肺サーファクタントと病変修復
Roles of Alveolar Epithelial Type II Cells and Pulmonary Surfactant in Acute Lung Injury and Repair
須加原 一博
1
,
久木田 一朗
1
,
大城 達男
2
Kazuhiro Sugahara
1
,
Ichiro Kukita
1
,
Tatsuo Ohsiro
2
1琉球大学医学部麻酔科学
2琉球大学医学部小児科
1Department of Anesthesiology, Faculty of Medicine, University of the Ryukyus
2Department of Pediatrics, Faculty of Medicine, University of the Ryukyus
pp.489-496
発行日 2002年5月15日
Published Date 2002/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902471
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はじめに
肺は,主にガス交換を行う臓器であるが,外気と直接接触し,その影響を強く受けることや循環血液全体と接し全身の影響を受けるなど,解剖学的あるいは生理学的に特異な位置にある.肺サーファクタント以外にも多くの生理活性物質を産生あるいは不活性化し,metabolic organとして活発な生理機能を営むだけでなく,体液調節,免疫機能や生体防御機構の上からも注目されている.
肺には40種類以上の実質細胞が存在するが,肺胞壁を覆っているのは主として肺胞I型上皮細胞と肺胞II型上皮細胞である.肺胞I型上皮細胞は扁平で,全肺胞表面積の90%以上を覆っていて,主にガス交換に携わっている.一方,肺胞II型上皮細胞は立方形細胞で,肺胞面には微絨毛を有し,細胞小器官に富み,肺サーファクタントの貯蔵として特徴的な層状封入体(lamellar body)を多数含有する.肺サーファクタントの合成・分泌のほか,肺胞I型上皮細胞への分化など幹細胞(stem cells)としての機能や肺胞被覆層における水・電解質の調節など正常肺構築の維持に重要な機能を有している1).
本稿では,最近分子生物学的解析が著しく進んだ肺サーファクタント・アポ蛋白質や炎症に深く関与する新たな肺胞II型上皮細胞産生物質(表1)を中心に,肺の炎症および病変修復過程における肺胞上皮細胞および肺サーファクタントの役割について,われわれの研究をもとに概説する.
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