巻頭言
エンドセリンと私の研究歴
南野 徹
1
1新潟大学大学院医歯学総合研究科循環器内科
pp.1089
発行日 2013年12月15日
Published Date 2013/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404102365
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最近,循環器内科学と呼吸器内科学がオーバーラップする分野として,肺高血圧症に対する治療の発展が目覚ましい.その治療法の中で,エンドセリン受容体に対する阻害薬の有効性が示されている.しかしながらエンドセリンが発見された当時は,心血管系の発生や動脈硬化・心不全・高血圧などの循環器疾患における重要性が盛んに研究されており,私もその研究に携わっていた.
医学部卒業後5年間は循環器内科医として臨床研修を行った.私も他のヒトたちがそうであるように,循環器内科の臨床のダイナミズムに惹かれてこの道を志した.しかし,日常臨床の流れに徐々に慣れてくると,個々の疾患の病態生理に興味が移った.特に印象に残っていたのは,家族性の拡張型心筋症の症例であった.当時は原因となる遺伝子が存在するかどうかも定かではなかった時代であるが,その遺伝子を同定することによって拡張型心筋症が治療できるのではないかと考えた.その頃,循環器領域の分子生物学研究のメッカであった矢崎義雄先生の研究室の門をたたいたところ,研究生として参加させていただけることになった.当初は,心不全グループに所属する予定だったが,矢崎教授の勧めもあり血管グループに配属された.そこでは,世界的にも研究が盛んとなっていたエンドセリンと動脈硬化についての研究をさせていただけることになった.当時すでに受容体もクローニングされ,その阻害薬も開発されていた.多数の遺伝子改変マウスも作製されており,エンドセリンの生理・病理学的な役割がしだいに明らかになりつつあった.
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