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安定期COPDに対する新たな治療薬開発の最近の動向
COPDの診断と治療に対する世界的ガイドラインであるGOLDが2011年に改訂され,安定期薬物療法に関する指針が大幅に変更された.GOLDガイドラインにおいては,安定期の薬物療法は,気道閉塞に加え,息切れを中心とする自覚症状,増悪頻度の3要素を総合的に考慮して決定すべきであることが推奨された(包括的重症度に則った薬物選択)1).日本呼吸器学会も2013年春にCOPDガイドライン(第4版)を改訂したが,その安定期薬物療法としてGOLDと質的に類似した指針を提示した2).これらのガイドラインに示されたように,COPDの安定期薬物療法の中心は,気道閉塞の緩和と気道炎症の抑制を介して日常生活における健康関連QOLの維持,増悪の抑制を目指したものと言える.本項では,COPDの気道閉塞と気道炎症に焦点を当て,これらを改善/抑制する新規薬物の開発状況について総括するものとする.COPDは肺外多臓器障害を惹起する全身性疾患(全身併存症)であり,その包括的治療には気道/気腔病変に加え全身併存症に対する治療も重要である.しかしながら,本稿では紙面の都合上,全身併存症に対する薬物療法については割愛する.
21世紀になり,COPDの気道閉塞を緩和する気管支拡張薬として長時間作用型のβ2受容体刺激薬(LABA;long-acting β2 agonists)と長時間作用型ムスカリン(M)受容体拮抗薬(LAMA;long-acting muscarinic antagonists)が中心を占めるようになり,それらの有用性は多くの大規模研究によって証明された(OPTIMAL3),INSPIRE4),POET-COPD5),TORCH6),UPLIFT7)など).気管支拡張薬に関する2010年以降のトピックスは,1日1回吸入の長時間作用型β2刺激薬(Ultra-LABA),優れた気管支拡張効果を有する新たなLAMA(New-LAMA),ならびに,両者の合剤である.Ultra-LABAとNew-LAMAの合剤はこの数年の間に発売が予定され,安定期COPDに対して新たな薬物療法が導入されるものと期待されている.さらに,気道炎症を今まで以上に抑制する1日1回吸入の長時間作用型吸入ステロイド(Ultra-ICS)とUltra-LABAの合剤開発も進んでおり,各製薬会社が切磋琢磨して取り組んでいる.現在,膨大な数の新規薬物が開発途上にあり,そのすべてを網羅することは不可能である.それ故,本稿では臨床的に有望と考えられる新規薬物に絞り,その基礎情報を紹介するものとする.
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