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特集 iPS細胞を用いた心臓病の診断と治療
iPS細胞を用いた2型遺伝性QT延長症候群の病態解明
Pathophysiological Analysis using LQT2-specific iPS-derived Cardiac Myocytes
神谷 香一郎
1
Kaichiro Kamiya
1
1名古屋大学環境医学研究所心・血管分野
1Department of Cardiovascular Research, Research Institute of Environmental Medicine, Nagoya University
pp.477-482
発行日 2012年5月15日
Published Date 2012/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101955
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はじめに
先天性QT延長症候群は,再分極の遅延による心電図QT時間が延長し,多形性心室性頻拍(トルサード・ド・ポアン;TdP)による急性心不全の怖れもある重篤な遺伝子疾患である.遺伝子型により12の型に分類されるが1~3),これまでに遺伝子異種発現系2)やモデル動物はあったものの4),ヒトの個人差を反映するような疾患モデルの確立が求められていた.近年,遺伝性QT延長症候群においても,患者体細胞からiPS細胞を樹立し,さらに心筋細胞に分化させて,その細胞電気生理学的特徴ならびに薬剤の効果を検討して病態の解明とその治療法を探索する試みがなされている5).先天性2型QT延長症候群(LQT2)に関しては,最近イスラエル6,7)と英国8)から相次いで報告されている.これらの研究では,いずれもカリウムチャンネル遺伝子変異による先天性2型QT延長症候群患者の体細胞からiPS細胞を樹立しさらにそれから分化させた心筋細胞を疾患モデルとして用いることで,パッチクランプ法などにより活動電位持続時間の延長など,疾患を特徴付ける機能異常の仕組みを解析するとともに,治療に有効な薬剤を検討している.
本稿では,LQT2患者iPS細胞から分化させた心筋細胞を用いた最初の報告であるItzhakiらの論文6)の内容を主として紹介する.
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