Japanese
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特集 慢性炎症と循環器疾患
慢性炎症・細胞間相互作用・臓器連関
Chronic Inflammation in Cardiometabolic Syndrome
真鍋 一郎
1
Ichiro Manabe
1
1東京大学大学院医学系研究科循環器内科
1Department of Cardiovascular Medicine, The University of Tokyo Graduate School of Medicine
pp.891-896
発行日 2011年9月15日
Published Date 2011/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101780
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はじめに
先進国において脳卒中を含む心血管疾患は全死亡原因の約半数を占める.心血管疾患の最大の原因は粥状動脈硬化であるが,そのリスク病態として,脂質異常症や高血圧に加えて,肥満,メタボリックシンドローム,糖尿病,慢性腎臓病などが注目されている.動脈硬化の形成過程や動脈硬化プラークの不安定化には,慢性炎症が深く寄与することが明確となっている.一方で,最近の研究により肥満やメタボリックシンドロームなどのリスク病態にも慢性炎症が不可分の関わりを持つことが明らかとなってきている.したがって,生活習慣病の発症・進展には共通した基盤病態として慢性炎症が重大な役割を担っていることが強く示唆される.さらに,がんにも慢性炎症が重要なことが示唆されるようになっており,慢性疾患の病態メカニズムを理解するためには炎症プロセスの研究が必須である.
慢性炎症の細胞・分子機構を検討するときに重要なポイントの一つは,炎症プロセスは主に間質で進行することである.臓器の機能障害を考えるとき,つい実質細胞の機能変化に注目しがちだが,慢性炎症では,実質細胞と間質に存在する細胞(血管細胞,線維芽細胞,免疫細胞)が密接に相互作用する結果,ダイナミックな細胞学的組織学的な変化と,全体としての臓器機能の障害をもたらすことを忘れてはならない.
本稿では,慢性炎症が生活習慣病に共通した基盤病態であることと,炎症プロセスにおける細胞間相互作用について実質細胞-間質細胞相互作用の側面から検討したい
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