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はじめに
動脈硬化は,血管壁における慢性炎症がその病態の基盤であるとの考え方が定着してきた.動脈硬化病変形成には喫煙,脂質異常症,高血圧などの様々な危険因子が指摘されているが,近年注目を集めているのが,メタボリック症候群の関与である.内臓脂肪の蓄積を特徴とするメタボリック症候群が動脈硬化を含む心血管合併症の危険因子となるという数多くのエビデンスが明らかにされている.では,内臓脂肪が蓄積すると,なぜ動脈硬化が引き起こされるのであろうか.この関係を説明する鍵となるのが,脂肪細胞における慢性炎症という概念である.つまり,脂肪細胞は単なるエネルギー貯蔵庫として働くのみならず,アディポサイトカインと呼ばれる様々なサイトカインを分泌することにより,一つの内分泌器官としての役割を果たしていることが明らかとなってきた.例えば,メタボリック症候群などの肥満患者では,TNF-α・IL-6・PAI-1・MCP-1などの炎症性サイトカインの血清濃度が上昇し1),抗炎症作用を持つアディポカインであるアディポネクチンが低下していると報告されている2).
これらの報告は主に腹部内臓脂肪に着目しているが,われわれのグループは,血管に直接付着している血管周囲脂肪組織(perivascular adipose tissue)に着目し,動脈硬化病変との関連性について検討を続けてきた.血管周囲脂肪組織は,これまで血管の支持組織と考えられ,その役割についてあまり注目されてこなかった.そこで本稿では,「異所性脂肪」の一つとしての血管周囲脂肪組織が,血管の慢性炎症や動脈硬化病変の形成に与える役割について,われわれの最新の研究成果を元に考察する.
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