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はじめに
免疫グロブリンIgGにはIgG1~IgG4のサブクラスがあり,IgG4はIgG全体の5~6%程度を占めるminorな存在であるが,この上昇を伴う“IgG4関連疾患”が近年着目されている.このclinical entityは,自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis;AIP)において最初に提唱されたが1),その後,胆管(硬化性胆管炎)2),唾液腺(慢性硬化性唾液腺炎)3),後腹膜線維症4),肝臓疾患(炎症性偽腫瘍,慢性肝炎)5),肺疾患(炎症性偽腫瘍,間質性肺炎)などでもこのIgG4が関与する炎症性疾患としてとらえられるようになってきた.これらの疾患群の特徴としては血清IgG4が上昇し,成人例に広く認められ,ステロイド治療に感受性があり,他臓器のIgG4が関与する硬化性病変が認められるなどといった特徴がある6).IgG4関連疾患はその起源となる臓器に関係なく共通の病態生理学的特徴がある.その共通点は罹患臓器に腫瘍を思わせる腫脹性病変を呈すること,びまん性にリンパ球・形質細胞の侵潤を伴うこと,時に好酸球が集簇すること,閉塞性静脈炎を伴うことがあることなどが挙げられる.そして免疫組織学的に検討を行うとIgG4陽性の形質細胞が病変内に多数集簇している所見が認められる.このIgG4が単なる血液学的マーカーではなく,IgG4陽性形質細胞が病態形成に深く関わっていることが推察されている7).多くのIgG4関連疾患は分泌腺・管腔組織に認められ,例外として後腹膜や縦隔4)などに認められる.最近ではIgG4の測定そのものが保険収載され,特に自己免疫性膵炎およびミクリッツ病の診断基準にはすでにIgG4値の測定が評価項目に加えられている.
そのようななかで心臓血管系に関しても最近,IgG4の関与が考えられる病態が報告されるようになり,にわかに注目を集めている.本稿ではこの循環器領域におけるIgG4関連疾患について概観したい.
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