Japanese
English
綜説
ALKと肺癌
ALK and Lung Cancer
間野 博行
1,2
Hiroyuki Mano
1,2
1自治医科大学ゲノム機能研究部
2東京大学大学院医学系研究科ゲノム医学講座
1Division of Functional Genomics, Jichi Medical University
2Department of Medical Genomics, Graduate School of Medicine, University of Tokyo
pp.491-497
発行日 2011年5月15日
Published Date 2011/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101700
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はじめに
肺癌は欧米および日本で癌死数の第1位を占める予後不良の疾患である.日本だけでも年間6万人以上,また米国でも年間16万人ほどの患者が肺癌によって亡くなっている.肺癌は早期に発見することが困難なため,根治が期待できる外科手術が行える症例は極めて稀である.しかも旧来の抗癌剤による化学療法では延命効果が少なく,病因に基づいた新しい肺癌の治療法開発が待たれていた.
近年,肺癌の一部の症例に上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor;EGFR)遺伝子の活性型変異が生じていることが報告され,しかもEGFR異常を有する症例の一部に対してEGFRのチロシンキナーゼ活性を阻害するgefitinibあるいはerlotinibが有効なことが明らかになった1).こうして肺癌にも分子標的療法の時代がついに訪れたのである.しかし,不思議なことにEGFR変異はアジア人,若年女性,非喫煙者に多く発症しており2),それ以外の症例がどのような活性型癌遺伝子を有しているのかは全く不明であった.そこでわれわれは機能スクリーニング法を用いて,新たな肺癌の原因遺伝子を同定することを目指した.
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