Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
人口の高齢化に伴い,今後ますます虚血性心疾患,高血圧,またこれら器質的心疾患の終末像である慢性心不全患者は増加することが見込まれる.日本における慢性心不全の疫学研究では,2030年には心不全患者が130万人を超えることが予測されている1).心不全の薬物,非薬物治療は,近年急速な進歩を遂げ,エビデンスに基づいた治療法が確立されてきた.しかしながら,最近の英国の研究では,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬といった薬物治療の進歩により,死亡率は改善しているものの,生存期間は男性2.34年,女性1.79年と,依然として短いことが報告されており,心不全医療の大きな課題である2).慢性心不全患者の多くは再入院を繰り返すため,心臓救急の現場では,再入院予防への対策が急務となっている.
欧米では,1990年代半ばから,医師,看護師,薬剤師,理学療法士,栄養士などがチームを組み,患者教育・治療アドヒアランスの向上・病状モニタリング・服薬管理を行う疾病管理(disease management)が,死亡,再入院といった予後や生活の質(QOL)に効果を示すことが数多く報告されている3~21).わが国においても,心不全患者に対する疾病管理の有効性の議論が高まっており,日本人を対象としたエビデンスの構築が求められている.日本では,虚血性心疾患や慢性心不全患者に対する心臓リハビリテーションにおいて,運動療法のみならず再発予防のための生活指導や冠危険因子を是正するための教育が実施されており,日本における有効な疾病管理プログラムの一つと考えられる.
本稿では,特に慢性心不全患者に焦点を当て,疾病管理プログラムが必要とされる背景とその有効性,さらにはわが国における疾病管理プログラムの構築の課題と心臓リハビリテーションが担う役割について概説する.
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.