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あとがき
永井 良三
pp.972
発行日 2010年9月15日
Published Date 2010/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101553
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今月の特集は「血管の非侵襲的な評価法のインパクト―その意義と最新研究」がテーマである.病気の成立を考えても,血管はあらゆる病態に関与する.癌も成長には血管が必要であるし,癌化も最近は慢性炎症を基盤とすると認識されるようになった.慢性炎症は,血管系と免疫・代謝系の連関であり,間質系と実質細胞の相互作用でもある.病気は単一の細胞が原因となるわけではなく,様々な生体システムの相互作用によって形成される.その意味で,血管から医学を再構築することも可能ではないかと思われる.
高齢になれば誰もが血管の病気を起こすようになる.癌と心臓病と脳卒中が日本人の3大死因だが,癌以外は血管の病気と考えても良い.しかし,癌も血管と縁が深い.血管病の診断は,従来,血管造影による解剖学的に狭窄や拡張の診断が中心だったが,今や超音波検査やCT,MRIなどの画像検査が進歩し,収縮弛緩という生理機能をみることが可能になった.治療についても,インターベンションの技術や医療機器,デバイスの進歩により,大きく選択の幅が広がった.それだけに,血管診療の発展はそのまま医療提供体制のあり方,特に医療経済の問題と直結する.高齢社会になれば医療費の伸びは当然といっても,常に医療内容の評価が必要であり,良かれと思うことを積み上げるだけにはいかないだろう.
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