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あとがき
永井 良三
pp.870
発行日 2008年8月15日
Published Date 2008/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101101
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高齢者社会は医療と医学のあり方に大きな影響をもたらしている.感染症が疾病の中心であった時代では,治療効果を知るには少数例の経験で十分であり,医学は実感の世界にあった.感染症の減少により高齢社会が到来したが,これは慢性疾患の増加を必然的に伴っていた.年間の重大なイベント発生率が低い疾患が増加したことによって,高齢社会が可能になったということもできる.慢性疾患を積極的に治療するのがよいのか,自然経過に委ねるのがよいのか,治療するとしたらどのように行うべきかを判断するのは容易ではない.そもそもイベントの発生率が低いために,結論を得るには膨大な数の患者を対象とした臨床疫学研究を行わなければならない.EBMの発展は,慢性疾患の増加がきっかけであったといっても過言ではない.心房細動はまさにこのような時代を背景として注目されるようになった疾患である.
かつて慢性心房細動はかならずしも治療の対象ではなかった.平均寿命の短かった時代には,脳梗塞の危険因子として心房細動の重要性が認識されることはあまりなかった.多くの疫学調査によって心房細動は脳梗塞の極めて重要な危険因子であることが明らかとなったのは比較的最近のことである.
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