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あとがき
永井 良三
pp.344
発行日 2010年3月15日
Published Date 2010/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101453
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病気をどのように理解するかは,医学のあり方とも関わる重要な問題である.近代医学では,病気の原因となる因子と因果関係を明らかにすることが主な研究テーマであった.インスリン発見に代表される内分泌学は,細胞病理学や細菌学に加えて液性因子による病因論を導入した.レニン・アンジオテンシン系は,高血圧症だけでなく心不全や血管病にも関わり,インスリンに劣らず医学の発展への貢献が大きい.すでに研究し尽くされたかに思われたレニン・アンジオテンシン系が,近年,プロレニンを中心に新たに展開していることは,本特集でご覧頂きたい.
様々な病原体やホルモンの同定は,メカニズムから病気を理解する手法を大きく花開かせることになった.しかしながら,このようなアプローチで理解できる病気は意外に少ない.高血圧,心不全,動脈硬化,脳卒中などの循環器疾患は,危険因子は知られていても,明確な病因があるわけではない.集団に対して有効とされる治療薬の効果も,個々の患者については確率で語るしかない.この考え方は,EBM時代になってから医療者側で定着してきたが,必ずしも患者に理解されているわけでない.
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