Japanese
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綜説
新しい抗血栓療法
New Antithrombotic Agents
後藤 信哉
1
Shinya Goto
1
1東海大学医学部内科学系(循環器内科)
1Department of Medicine, Tokai University School of Medicine
pp.707-710
発行日 2010年7月15日
Published Date 2010/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101513
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抗血栓療法
循環器内科は心臓血管病の診断,治療を主目的とする学問領域である.心臓,血管系の生理機能は比較的単純である.筋肉細胞よりなる心臓は周期的に収縮することにより全身に血液を送り出す.血液は酸素,栄養物などを末梢組織に送り込み,老廃物を末梢組織から回収して全身の恒常性維持に寄与する.筆者が循環器内科の領域に入った1980年代の循環器研究では,心臓のポンプ機能に関する研究に従事する研究者が多かった.米以外に食べもののないforced vegetarianとも言わざるを得ない環境で育ったわれわれの世代では動脈硬化の進展は遅く,冠動脈疾患の有病率,心筋梗塞の発症率ともに本邦では欧米よりも低かった.世界的には米国を中心に冠動脈疾患,心筋梗塞などは医療上の問題と認識されたが,心筋梗塞の発症メカニズムについては不明の部分が多いとされたのが筆者が循環器内科のトレーニングを受けた当時の状況であった.
1980年代からアスピリンに代表される抗血小板薬,ストレプキナーゼに代表される線溶薬の開発が進んだ.同時期に心臓カテーテル検査,冠動脈造影の技術が進歩し,経皮的冠動脈血管形成術(PTCA)も普及した.これらの薬物療法,非薬物療法の進歩により,心筋梗塞の発症における冠動脈の閉塞血栓の役割の重要性に関する理解が進んだ.血小板研究のバックグラウンドを有する循環器内科医であるFusterらは「急性冠症候群」の概念を提唱し,急性虚血性心疾患の発症における血栓の役割が理論的にも明確にされた1,2).
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