巻頭言
冠動脈疾患の診断―解剖学的評価か機能的評価か?
赤阪 隆史
1
1和歌山県立医科大学循環器内科
pp.655
発行日 2010年7月15日
Published Date 2010/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101512
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冠動脈狭窄病変は心筋虚血の「存在」診断と「部位」診断によって評価されており,心筋虚血の有無は負荷心電図や心筋シンチグラフィーなどの生理機能学的検査で,最終部位診断は解剖学的検査法である冠動脈造影(CAG)で評価されてきた.CAGによる内径狭窄率は,現在でも冠動脈狭窄病変の重症度評価の最終診断法として用いられ,種々の生理学的評価法の基準とされてきた.しかし,CAGは冠動脈内に満たされた造影剤の投影像に過ぎず,冠動脈狭窄の評価法としての問題点や限界も報告されており,基本的に心筋虚血の有無や程度を検出できない.それゆえ,心筋虚血の客観的評価である生理学的評価は,冠動脈狭窄病変の有無と重症度の評価法として解剖学的評価と同様に重要な検査法と考えられている.しかも,生理学的検査法はCAG所見と必ずしも一致しないことやCAGとは独立して予後を推測できることなどが報告され発展してきたが,その本来の基準はCAGによる冠動脈狭窄率である.それゆえ,日常臨床では解剖学的評価法と機能的評価法の所見が一致しない場合にどちらを優先するかが問題になり,議論の絶えないところである.
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