Japanese
English
Bedside Teaching
抜歯と抗血栓療法
Dental Extraction in the Patients undergoing Antithrombotic Therapy
矢郷 香
1
,
臼田 慎
1
,
朝波 惣一郎
1
Kaori Yago
1
,
Shin Usuda
1
,
Soichiro Asanami
1
1慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学
1Department of Dentistry and Oral Surgery, School of Medicine, Keio University
pp.993-1000
発行日 2006年9月1日
Published Date 2006/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100459
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はじめに
歯科口腔外科の日常臨床において抜歯は最も一般的な観血処置であるが,術後,創部はガーゼによる圧迫で容易に止血可能である.
しかしながら,1957年にZifferら1)が,抗血栓薬を継続したまま抜歯したところ,後出血を来したため,それがきっかけとなり抜歯前に同薬剤の中止を推奨した.以後,本邦では,抗血栓療法中の患者の抜歯では,抜歯時や抜歯後出血が懸念されるため,ワルファリンや抗血小板薬の休薬が固定観念化されていた.
近年,抗血栓薬の一時中断による塞栓症イベント合併が問題視され,『循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2002-2003年度合同研究班報告)』では,抗血栓薬を中止しないで抜歯することが望ましいとされている2).Wahl3)は,抜歯にあたりワルファリンを中止すると0.9%に塞栓症を生じ,発症すると重篤で,大多数が死の転帰をとることを報告している.本邦でも,抗血栓薬の休薬により脳梗塞や心筋梗塞などが生じるとの報告4)が散見される(表1).最悪の場合には死に至るケースもあるので,まずは患者の全身的リスクを最優先して抜歯を施行したい.
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