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今月は特集テーマとして「喫煙の呼吸器・循環器に及ぼす影響」が取り上げられている.これほど喫煙の害が声高に叫ばれているにもかかわらず,特に中・高生を中心とした未成年者で喫煙率が増加している事は由々しき問題である.タバコ煙にはニコチンに加え,COをはじめとする4,000種類以上の物質が含まれ,有害物質として認定されているものだけでも200種類に上る.そのうち60種類ほどが発ガン物質とされる.本特集でも記述があるように虚血性心疾患,脳卒中,ガン,その他と喫煙の関連を示すエビデンスは枚挙にいとまが無い.米国での巨大タバコメーカーの絡む訴訟が大きな社会問題になったのも記憶に新しい.
私が理事長を務める日本循環器学会では禁煙推進委員会を設置し,2002年には「禁煙宣言」を出して,禁煙と受動喫煙防止活動に大々的に取り組んでいる.そんな中,当の私が4年半前にJTから旧東京専売病院を承継した国際医療福祉大学三田病院に赴任することになった事に何か因縁を感じる.JTの社員は販売促進のためにも「喫煙」が仕事の一つとされてきたと聞く.そのJTが経営していた承継前の病院では,日本循環器学会が禁煙宣言を出した後も各病棟の面会室に堂々と灰皿が置かれていて,心ある入院患者さんからのクレームが相次ぎ,漸く院内禁煙が決まったとも聞く.勿論現在は建物内は禁煙となっているが,残念ながら屋外に指定の喫煙スペースが残っている.また,私が顧問をしているある団体では,未だに職場での喫煙が公認で,部屋の反対側の人が煙にかすむような環境で受動喫煙に苦しみながら働く社員がいる.結婚しても妊娠への不安を抱える女性社員からの相談も後を絶たない.
まだまだ長い道のりかもしれないが,喫煙と疾病の関連を示すエビデンスを根気よく積み上げ,国民の自覚を高め,国策として禁煙推進を継続していく他あるまい.
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