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あとがき
小川 聡
pp.1290
発行日 2007年11月15日
Published Date 2007/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100933
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今月号では特集として「心血管疾患とエージング」が取り上げられている.高齢化する社会の中で避けて通れないテーマであるが,この課題に対する解決の道筋は未だ明確についているとはいえない.心房細動一つ取り上げても,社会の高齢化とともに確実に心房細動患者数は増加してきているにもかかわらず,高齢者心房細動患者への対応は未だ議論の多いところである.高齢そのものが血栓塞栓症の危険因子とはいえ,相対的な出血リスクの増加があるために抗凝固療法の適正使用が高齢者では進まない.抗不整脈薬に関しても,心機能,腎機能,肝機能への配慮を行うと自ずから選択薬の範囲,投与量に制限がつき若年者ほど治療効率が上がらない.近年,飛躍的に治療成績の向上している肺静脈の電気的隔離術を含むカテーテルアブレーション治療も高齢者への適応は狭い.加齢に伴い全体に占める患者数の割合や治療の必要性が高くなるとはいえ,その治療選択肢は逆に狭くなるという現実に直面している.
そうしたなかで重要になるのが,疾患そのものの発症予防である.その背景には疾患の発症機転の解明があることは言うまでもないが,様々な研究からそれが現実的になってきている.心房細動に関しても,心房筋の肥大,間質の線維化,細胞間結合の障害,イオンチャネル発現の変化など,いわゆる構造的ならびに電気生理学的リモデリングと言われる諸々の変化が加齢とともに発症と増悪に関わっていることが明らかとなっている.これらを抑制する薬剤,例えばアンジオテンシン受容体拮抗薬,アルドステロン拮抗薬,スタチン,抗酸化薬などが心房細動の発生のみならず増悪をも阻止することが多くのメガトライアルでも証明されてきている.
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