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あとがき
小川 聡
pp.1190
発行日 2008年11月15日
Published Date 2008/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101159
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我々の世代にとって,卒後数年間の研修中に本誌に研究論文や症例報告を投稿することは一つの憧れであり,名前が掲載された雑誌が手元に届いた時は随分感激したものであった.特に,症例報告は内科医としての勲章の様にも感じられるものであったし,その疾患に関するあらゆる文献を検索し,考察して,自分の症例を改めて勉強し直す絶好の機会であった.指導医との間のやり取りを通じて,科学論文の書き方も勉強できた.自分のミスで掲載論文に誤植が見つかった時の大きな落胆も,次への大事な経験となった.
ところが最近の各誌の症例報告の投稿状況を見渡すと,どこも論文数が著減しているのはどうしたことであろうか.私の研究室においても,学会発表まではコンスタントに出し続けられてはいるが,論文として上がってくることは滅多になくなっている.論文の推敲,文献の纏め方を含め,若い諸君達は何処で勉強しているのか甚だ心配になってしまう.確かに,研究成果の発表は海外の英文誌や学会誌が主体となり,それにエネルギーを費やしているのかもしれない.また,そうした学術雑誌では症例報告の取り扱いが年々厳しくなって来ている.それは雑誌のImpact Factor重視の観点から,引用される可能性の低い症例報告の枠が減らされており,段々と執筆意欲が下がって来ているのかもしれない.
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