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はじめに
喫煙や大気汚染に伴う有害粒子の吸入により肺の異常な炎症反応が生じ,気道系や肺胞実質系に多彩な病変が形成され,それらが複合的に作用して閉塞性換気障害を呈するchronic obstructive pulmonary disease(COPD)は,加齢による生理的な低下を上回る速さで経年的に肺機能が低下していく疾患である.その進行を抑制することが証明された治療はこれまでのところ禁煙のみであり,治療目標として経年的肺機能低下を抑えることに大きな関心が寄せられている.
COPDも気管支喘息と同様に気道の炎症性疾患として捉えられるため,抗炎症薬である吸入ステロイド薬が1秒量の経年的低下を抑制しうるかどうかが検討されてきた.しかし,1999年から2000年に発表された4つの大規模臨床試験(Copenhagen City Lung Study1),EUROSCOP2),ISOLDE3),Lung Health Study-24))により,吸入ステロイド薬ではCOPDの進行,すなわち肺機能低下を抑制する効果は認められないことが確認された.
その後,吸入ステロイド薬と長時間作用型吸入β2刺激薬(LABA)の併用による臨床効果が検討された.代表的には,エンドポイントを全ての原因による死亡率として3年間追跡したTORCH study5)が,プラセボ,LABA単独,吸入ステロイド薬単独,その併用の4群で各々約1,500名の患者が対象として行われ,2007年に成績が発表された.単独治療群,併用治療群のいずれも主要エンドポイントである死亡率についてはプラセボ群と比較して有意差を認めなかったが,3つの実薬群はプラセボ群よりもCOPDの増悪を予防し,そのなかで併用群が最も優れていた.TORCH studyにおける1秒量の経年的低下に関しては後解析が報告されているので後述する.
吸入抗コリン薬については,イプラトロピウムを用いた試験では1秒量の経年的低下は抑制できないと報告されていた6).しかし,Anzuetoらは,921例のCOPD患者を対象に1年間チオトロピウムとプラセボの二重盲検試験を行い,FEV1の経年的低下がチオトロピウム群で12ml,プラセボ群で58mlと有意に軽減されたことを示した7).この結果を受けて,世界35カ国で6,000例を対象として4年間にわたりFEV1の経年的低下抑制効果をみるUPLIFT(Understanding Potential Long-term Impacts on Function with Tiotropium)studyが組まれ,2008年10月にその結果が発表された8).
本稿では,このUPLIFT studyの結果を他の報告と比較して紹介する.
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