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特集 COPD大規模臨床研究から分かるもの
TORCH試験とINSPIRE試験
TORCH study and INSPIRE study
浅野 浩一郎
1
Koichiro Asano
1
1慶應義塾大学医学部呼吸器内科
1Division of Pulmonary Medicine, Keio University School of Medicine
pp.807-812
発行日 2009年8月15日
Published Date 2009/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101310
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なぜ大規模長期臨床試験が必要なのか
COPDに対する薬物療法により得られる効果(アウトカム)として,肺機能(1秒量)の増加や息切れなどの症状改善効果は短期間で評価しやすいというメリットがある.しかし,このような短期間での効果を指標として,COPDのような慢性疾患患者における薬剤効果を評価することには大きな落とし穴がある可能性がある.
例えば,心室性不整脈の患者に対する抗不整脈薬の使用法の変遷がその好例である.大規模長期臨床試験が実施される以前から,心室期外収縮,特に心室頻拍の頻度が高い患者では心臓突然死を起こしやすいということは知られていた.それに基づき,心室頻拍の抑制効果がある抗不整脈薬が心臓突然死を減らすことを期待して汎用されていた.それを証明するための大規模長期臨床試験として,心室性不整脈のある心筋梗塞後の患者を対象に抗不整脈薬とプラセボを投与し,不整脈による死亡をプライマリーエンドポイントとして評価するCAST試験などが実施された.ところが,抗不整脈薬投与群では不整脈の頻度は減るが,不整脈による死亡率は逆にプラセボ群と比べ有意に高くなるという結果が得られ,不整脈の治療戦略に大きな衝撃を与えた1).
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