巻頭言
COPDと循環器疾患
桑野 和善
1
1東京慈恵会医科大学内科学講座・呼吸器内科
pp.655
発行日 2009年7月15日
Published Date 2009/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101295
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「病める人を全人的に診る医療」を基本的精神として「病気を見ずして病人を見よ」と遺訓を残したのは慈恵医大の開設者,高木兼寛である.医師をはじめとして教育者や政治家に至るまで,この遺訓はよく引用されている.病人の立場に立って考えよ,思いやりを持って病人を見よ,自分の親兄弟と思って診療せよ,といった基本的診療精神に立脚し,基礎と臨床医学に関する幅広い知識を持って,表面に現れた病態のみに目を奪われることなく,全身を観察し病態の本質を見極める医療であると理解している.言うは易いが実行するには日々継続して努力することが必要である.
最近の呼吸器疾患のなかで最も注目されているものの一つがCOPD(chronic obstructive pulmonary disease;慢性閉塞性肺疾患)である.COPDは,大気汚染物質,特に喫煙による肺気腫と末梢気道障害による閉塞性換気障害を呈する.最近注目されてきた理由は,喫煙そのもの,またはCOPDが発症したために,肺内で産生が増加したサイトカインが全身性の炎症を惹起すること,喫煙そのものが全身の諸臓器に炎症や損傷を惹起するためである.そのため,他臓器疾患,特に喫煙がリスクファクターとなる冠動脈疾患,心不全などの循環器疾患とCOPDとの関連性が様々な面より研究されている.
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