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慢性閉塞性肺疾患(COPD)による全国の死亡数は,2009年には男11,940人,女3,419人,計15,359人(うち85%が75歳以上)で,1999年以降,死因の第10位となっている.これまでの高い喫煙率や高齢者の増加などを背景に,今後さらに急増するものと予測されており,全世界では2020年までに死因の第3位となるものと推計されている.しかしながら,当地域では本疾患に対する住民等の関心は高くない.こうした中,関係者の間ではCOPDに関する研修が行われるようになっており,医療連携パスの運用も始まっている.COPDは個体側要因にタバコ煙など有害粒子の吸入によって生ずるとされるが不明な点も多く,死因についても十分に解明されていない.本疾患の分布には病期によっても地域差が見られることが報告されており,国内においても,都道府県別の年齢調整死亡率は西日本で高い傾向にある.ここでは,1980~2005年までの5年ごとの都道府県別年齢調整死亡率と,気象,大気汚染,喫煙率との関連について紹介する.なお,気象については各都道府県庁所在地の値を,大気汚染に関するデータは各都道府県測定局における算術平均値を用いた.
COPDによる各都道府県の年齢調整死亡率は,日平均気温および日最低気温の平均値と最も相関を示し(相関係数男0.35~0.64,女0.47~0.73),気温と関連する何らかの交絡因子が死亡率に影響している可能性も示唆された.一方,大気汚染指標のうちの浮遊粒子状物質(SPM)濃度との相関係数は,男で-0.35~0.11,女で-0.13~0.33であった.弱い正の相関が見られた2005年にはSPMと気温の相関係数も0.40~0.67となっていることから,単年の分析でCOPD死亡へのSPMの影響を過大評価しないよう注意する必要がある.COPDによる年齢調整死亡率と他の気象および大気汚染に関する指標,喫煙率との間には相関は見られなかった.COPDによる月別死亡数を見ると,12月および1月にやや多い傾向となっており,気温の高い時期には多くなかった.結核罹患率も同様に気温との相関が認められ,それらの背景に興味が持たれる.
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