Japanese
English
綜説
グレリンと呼吸器疾患
Impact of Ghrelin on Respiratory Medicine
芦谷 淳一
1
,
中里 雅光
1
Jun-ichi Ashitani
1
,
Masamitsu Nakazato
1
1宮崎大学医学部内科学講座神経呼吸内分泌代謝学分野
1Neurology,Respirology, Endocrinology and Metabolism, Internal Medicine, Miyazaki University School of Medicine
pp.489-494
発行日 2009年5月15日
Published Date 2009/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101260
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はじめに
グレリンはKojimaら1)によってラットおよびヒトの胃から発見された成長ホルモン(GH)分泌促進物質である.筆者らは,グレリンが視床下部の食欲中枢を介して強力な摂食亢進に作用することを報告し2),消化器官である胃が末梢の内分泌臓器として中枢へ情報を伝達しているという新たな臓器間クロストークの概念を提唱した.その後,世界中におけるグレリン研究の成果から中枢神経,消化器,循環器,呼吸器,運動器など全身の臓器を標的とした生理作用とともに,免疫や内分泌代謝など生体制御系の調整機能が解明されている.老化に伴うGHの低下はソマトポーズと呼ばれ,筋肉と骨量の低下および内臓脂肪蓄積型肥満などをもたらし,生活の質を低下させる.老化現象として知られる骨・筋肉量の低下,エネルギー代謝障害,心肺機能の低下あるいは免疫能低下などは,グレリン作用の減弱と密接に関連していることが推定される.呼吸器系臓器においても加齢は,形態的かつ生理的に機能低下をもたらす重要な因子である.以上から,呼吸器疾患の病態において肺・気道の防御機構にグレリンが関与しており,グレリンの生理作用が呼吸器疾患の治療に臨床応用できる可能性がある.
本稿ではグレリンの構造や基本的な生理作用と呼吸器疾患における臨床的意義さらに治療応用研究の現状について解説する.
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