巻頭言
分化と統合
長谷川 好規
1
1名古屋大学大学院医学系研究科病態内科学講座呼吸器内科学
pp.447
発行日 2009年5月15日
Published Date 2009/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101259
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科学を追究する過程において研究領域の細分化は避けがたい事実である.医学研究においても,人体解剖による臓器形態学から始まり,細胞,遺伝子,分子へと新しい世界へと進むなかで,その領域は枝葉のごとく広がり,知識量は膨大となってきた.
近年の生物科学の発展のなかで注目される発見として,組織において最終的に分化した細胞である上皮細胞が間葉系細胞に変化する現象(上皮間葉系細胞転換:Epithelial-Mesenchymal Transition;EMT),またその逆の現象であるMesenchymal-Epithelial Transition(MET)が報告された.当初は,初期胚発生における原腸陥入や器官形成過程に重要な現象としてその役割が明らかとなっていたが,さらに炎症過程,そして組織リモデリングの各過程においてEMT-METを含めた細胞の形質転換に伴う細胞の変化が報告されている.それは,細胞がEMT-METなどにより細胞起源固有の生物学的特性,特に細胞間接着に関与する接着因子を喪失させる一方,細胞骨格構造の変化に伴う線維芽細胞様形態の獲得および線維芽細胞が有する生物学的特性の獲得により,細胞可動性・遊走性を向上させることを示している.
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