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綜説
両室ペーシング療法(CRT)の適応をめぐって―組織ドプラの観点から
Indication of Cardiac Resynchronization Therapy(CRT)Based on Tissue Doppler Echocardiography
中谷 敏
1
Satoshi Nakatani
1
1大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻
1Department of Health Science, Osaka University Graduate School of Medicine
pp.495-500
発行日 2009年5月15日
Published Date 2009/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101261
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ディスシンクロニーとCRT
慢性心不全ではその約30~50%において心電図上QRSの拡大を認め,何らかの形の心室内伝導障害があるといわれている1).心室内伝導障害はディスシンクロニーを引き起こし,心室の収縮,拡張を非効率的にするのみならず,両側乳頭筋のディスシンクロニーは僧帽弁逆流を増大させ心不全を悪化させる.慢性心不全例において心室内伝導障害の程度と患者の予後が相関するといわれる所以である2).CRT(cardiac resynchronization therapy;両室ペーシング療法)は左室を挟み込むように留置した2本のリードでペーシングを行い,このディスシンクロニーを軽減することによって心不全の軽減を狙う治療法である.
ディスシンクロニーには房室間,心室間,心室内の3種類があり,CRTが有効に働く例ではこの何れもが軽減する.しかし,現時点におけるわが国でのCRTの適応は,①NYHA III~IV度,②薬剤抵抗性,③心電図上QRS幅が130ms以上,④左室駆出率が35%以下を満たす慢性心不全となっており,この基準のなかにディスシンクロニーについての記載が含まれていない.心電図上QRS幅が広いということは示されているが,電気的ディスシンクロニーと機械的ディスシンクロニーは必ずしも一致しない.そのためか,この基準を満たした例にCRTを行っても約3~4割は治療に反応しない(non-responder).すでに多くの大規模試験が発表されている欧米でも同様の結果である3).少しでもnon-responderを減らすためには,ディスシンクロニーを的確に評価して効果が期待できる例に植え込むことが望ましい.
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