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グレリンは成長ホルモン分泌促進物質として,ヒトとラットの胃から抽出された28アミノ酸残基よりなるペプチドで,脂肪酸修飾という特徴的な構造を有している。グレリン細胞は胃体部に最も多く存在し,胃幽門部,腸,膵臓,視床下部,胎盤,腎臓などでも産生される。グレリンの摂食促進作用は脳室内投与のほか,静脈内や腹腔内投与でも認められ,他の摂食促進ペプチドと違い,今まで知られている中で唯一の末梢性摂食促進作用を有するペプチドである。胃のグレリン細胞から出されたシグナルは,迷走神経求心路を伝わり,延髄孤束核を経由して視床下部弓状核に到達する。脳内でのグレリン受容体は海馬,歯状回で最も多く,室傍核,弓状核,視索状核などに発現している。グレリンは摂食亢進作用のほかにも,エネルギー代謝・循環器系調節だけでなく記憶・睡眠などの働きも調節している可能性がある。
はじめに
ヒトゲノム・プロジェクトによりゲノム配列が決定された現在,ゲノム機能解析の時代に入り,タンパク質の解析が重要な課題となっている。創薬の標的になる分子の約半数近くが,G蛋白質共役型受容体である。G蛋白質共役型受容体とは,哺乳類では100種類以上も存在してホルモン,局所仲介物質,神経伝達物質などの細胞外情報を認識する受容体である。細胞外情報を認識することにより,細胞内では様々なタンパク質の機能調節や遺伝子発現などの調節が行われ,目的とする反応が起こる。薬剤開発には,G蛋白質共役型受容体が重要となり,そのためにはまず内在性のリガンドの同定が課題となる。
1999年,国立循環器病センターの児島,寒川らは,オーファン受容体である成長ホルモン分泌促進因子受容体(growth hormone secretagogue receptor:GHS-R)の内因性リガンドであるグレリンを,ヒトとラットの胃から発見した20)。グレリンは,下垂体からの成長ホルモン(GH)分泌を強力に促進するペプチドである。グレリンは,ほかに摂食亢進,消化管機能調節などのエネルギー代謝調節や,循環器系の調節などにも重要な役割を担うことが明らかにされつつある。本稿では,グレリン発見の歴史から現在まで明らかになっている生理作用について概説する。
Ghrelin is a 28-amino-acid acylated peptide isolated from mammalian stomach as an endogenous growth-hormone-releasing peptide. Ghrelin functions not only in growth hormone secretion but also in the regulation of feeding behavior and energy homeostasis. In this review, we describe discovery, structural characteristics, tissue distribution, and physiological functions of ghrelin, as well as the regulation of its expression and secretion and future directions of research.
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