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あとがき
石坂 彰敏
pp.442
発行日 2009年4月15日
Published Date 2009/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101247
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今月号の特集は「呼吸器疾患診断の進歩―形態と機能の系統的評価」である.近年,呼吸器疾患の診断技術は格段の進歩を遂げ,呼吸器病学の発展に寄与しているが,本特集ではCTを用いた画像診断,MRおよび核医学による機能的画像診断,内視鏡診断,バイオマーカーを用いた診断,遺伝子診断,そして新しい呼吸機能検査に関して網羅的に解説頂いた.
私が入局した二十数年前を思い出してみた.もちろん,胸部CTなどはあまり普及しておらず,画像としての質も極めて低かった.気管支拡張症や肺気腫の画像診断には,気道内に造影剤を注入して行う気管支造影法やSAB(選択的肺胞気管支造影)が用いられていたが,極めて侵襲的な検査であった.ただでさえ呼吸不全状態である患者さんの肺内に造影剤を注入し,そのうえ“息を止めて”とかけ声をかけて胸部X線写真を撮影するのである.多くの患者さんはチアノーゼを呈した.小生はこの検査を行うことに疑問を持ち,検査前後の血液ガスについて学会発表したことがあるが,確か動脈血酸素分圧が30Torr以上低下していたと記憶している.また,フレキシブルな気管支鏡も普及しつつあったが,患者さんを“串刺し”状態にして検査する硬性気管支鏡も盛んに行われていた.もちろんMRは存在せず,呼吸器領域の核医学検査としては換気血流シンチとガリウムシンチがあるのみだった.
こうやって考えてみると,ここ二十数年の医療技術の進歩はめざましく,多くの科学者のたゆまない努力の成果の結晶である.今後の革新的な検査に期待したい.
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