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全ての疾患は形態の異常,代謝の異常,そして臓器の機能異常として表れる.したがって,疾患の診断と評価は,画像検査,血液をはじめとする検体検査,臓器機能検査などを組み合わせて行う.呼吸器疾患も例外ではなく,呼吸機能検査により呼吸機能の評価を行うことが必須である.しかしながら,循環器をはじめとするその他の分野に比較し,呼吸機能検査の普及は十分ではなく,医療関係者にさえなじみの深いものとは言い難いのが現状である.特にプライマリケア医においてはスパイロメータの普及率は非常に低く,これが地域における呼吸器疾患診療の障害になっていることは疑いない.すなわち,COPDの診断率の低さ,気管支喘息の過小治療による難治化,間質性肺疾患の見落としや過小評価など多くの問題が潜在している.これらの問題を解決し,呼吸器疾患の診療の質を向上させるためには,呼吸機能検査の普及が不可欠であり,とりわけ最も簡単に呼吸機能異常をスクリーニングできるスパイロメータを普及させることが必要である.私は,日常診療の呼吸機能評価には,スパイロメトリーと動脈血ガス分析の2つがあれば十分だと思っている.このうち,動脈血ガス分析はプライマリケア医での診療にはより簡便なパルスオキシメータでの代用が可能であるが(もちろん全ての症例ではないが,多くの症例で一次検査としての低酸素血症のスクリーニング),スパイロメトリーを簡便なピークフローメータで代用することはできない.ここでは詳しくは述べないが,検査の精密さと得られる情報量の多さからスパイロメトリーはピークフローをはるかに凌ぐものである.
日本呼吸器学会では,一昨年より肺生理専門委員会を中心に実地医家にスパイロメトリーを普及させる運動を展開してきた.わかりやすく図解した「スパイロメトリーハンドブック」を作成し,実地医家を中心に数万部を配布した.さらに,今年は医療関係者だけでなく一般市民にも呼吸機能をより身近なものとして感じてもらうために,「肺年齢」という概念を提唱し多くのキャンペーンを計画している.これまで非常に難解で高尚であった呼吸機能を,相手が理解できる言葉で語りかけ,説明するという姿勢で呼吸機能検査の普及に努めていくつもりである.
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