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はじめに
ポリオウイルス感染による急性麻痺性灰白髄炎は,小児に好発し,主として脊髄や延髄の運動神経細胞(前角細胞)が侵襲され,弛緩性麻痺を呈する.欧米では1950年代,本邦では1940~60年に大流行した際に,鉄の肺や気管切開による長期陽圧人工呼吸が開始されるきっかけとなった1,2).1963年以降はワクチンによる予防が普及し,先進国での新たな発症はほとんどみられない.
その後,以前ポリオに罹患し,機能回復して安定期を10年以上過ぎてから,新たに進行性の慢性筋力低下,疲労,痛みが出現する例が増えてきた3).これらは,1984年の国際会議で,ポストポリオ症候群と呼ばれるようになった3).筋力低下は四肢や体幹の筋力や呼吸や嚥下に影響を及ぼし,痛みは筋痛や関節痛が多く,疲労は全身性であったり,ある筋肉に限られたりする.発症のリスクには,残存障害の程度,加齢,日常生活維持の努力による慢性のストレスや過用も関係しているといわれる.機序は完全には解明されていないが,神経末端の退行変性を伴う特徴的な筋萎縮が報告されている3).
ポストポリオ症候群では,呼吸不全やそれによる死亡が起こりやすいことが知られているが,回避は不可能ではない4).ポストポリオ症候群では,呼吸筋力の低下だけでなく,脊柱側彎,肥満,睡眠呼吸障害,喉咽頭機能低下を高率に認める5).これらにより,慢性肺胞低換気(chronic alveolar hypoventilation:CAH)の悪化を来す.呼吸器合併症のリスクは,咳と深呼吸の能力と逆相関する.高炭酸ガス血症や不十分な咳の流速は,上気道感染での排痰困難や急性呼吸不全に至るまでに認識されることは少ない.非侵襲的に吸気と呼気筋を補助することにより,急性呼吸不全や呼吸器合併症のための入院や気管内挿管を回避する6).
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