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はじめに
急性非代償性心不全治療の目的は,現在生じている生命を脅かす病態,症状の改善とその予後の改善にある.急性心不全のほとんどの症例は利尿薬と強心薬の併用で血行動態と症状は改善することから,日常診療では利尿薬と強心薬が治療の中心という流れになってきたものと推測できる.しかし,残存心筋保護という概念を考え,急性心不全の治療目標を「血行動態保持と臓器うっ血症状の改善」「残存心筋保護」を両立させることとしたとき,それぞれの目標を達成するための治療法に相反するジレンマが生じることがある.例えば,特に重症心不全治療において,心原性ショックの救命のためにはカテコラミン製剤を使用することは当然であるが,カテコラミンの残存心筋への傷害作用の懸念が残る.それでも強心薬による血行動態の改善が残存心筋への傷害を上回る効果があれば,生存率は改善するのでそれでよいのだが,最近エビデンスが集積しつつある急性心不全の多施設試験の結果をみると必ずしもそうでない可能性が示唆され始めた.
一方,慢性心不全の領域ではACE阻害薬,β遮断薬を中心に心筋保護の概念が確立されており,大規模試験によるエビデンスの集積を基にガイドラインも確立されている.さらには客観的な評価法としての生化学指標の研究も進んでおり,われわれは心負荷の指標(脳性ナトリウム利尿ペプチド;BNP,N端proBNP)と心筋傷害の指標(トロポニン)を組み合わせて慢性心不全の状態を評価することを提唱してきた1~3).しかし,これら生化学指標はいずれも測定時間がかかることより,長らくこの概念を急性心不全には応用できない状態であった.
本稿では,急性心不全でも集積しつつある最新のエビデンスをもとに「血行動態改善」と「心筋保護」の両立を目指した新しい考え方を述べ,急性非代償性心不全領域(急性冠症候群を除く)における最新機器PATHFASTの使用法の可能性について考察する.
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