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特集 セロトニンと循環器疾患
セロトニンと側副血行・心筋虚血
Serotonin and Collateral Circulation/Myocardial Ischemia
衣川 徹
1
,
藤田 正俊
2
Toru Kinugawa
1
,
Masatoshi Fujita
2
1鳥取大学医学部第一内科・循環器科
2京都大学医療技術短期大学部衛生技術学科
1Division of Cardiology, 1st Department of Internal Medicine, Faculty of Medicine, Tottori University
2College of Medical Technology, Kyoto University
pp.563-568
発行日 2002年6月15日
Published Date 2002/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902481
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はじめに
冠側副血行路とは,虚血性心疾患において冠動脈が狭窄あるいは閉塞した際の代償機構として機能する冠動脈間吻合を意味し,その機能的重要性は広く認識されている1,2).その血液供給能は,解剖学的な発達程度,側副血行路を介する冠動脈間の圧較差などにより主に規定されている.この冠側副血行血流量を増加させることは心筋虚血の軽減化をもたらすことより,新たな虚血性心疾患の治療法の一つとなり得るものと考えられる3).
セロトニンは活性化された血小板から放出され,血管トーヌスの調節,血管平滑筋の増殖,血小板凝集などの作用を有する.このセロトニンの動脈硬化促進作用,血小板凝集作用に注目して,近年,セロトニン受容体の選択的受容体拮抗薬が臨床応用され,閉塞性動脈硬化症などの血管疾患へ応用されるようになった4).しかし,このセロトニンの動脈硬化促進作用,血小板凝集作用が冠動脈においても認められることはいうまでもなく,事実,Vikenesらは,心事故と血中セロトニン濃度に関する検討を行い,血中の総セロトニン濃度が高い症例において,冠動脈疾患の有病率が高く,かつ心筋梗塞,心臓死,不安定狭心症の発生が多いことを報告している5).このようにセロトニンは,虚血性心疾患を含む動脈硬化性疾患の病態形成に重要な役割を果たしていることが示唆されている.
最近の研究成果より,セロトニンが冠側副血行循環調節においても密接に関与することが明らかとされてきた.本稿ではセロトニンと冠側副血行循環について概説するとともに,われわれの行ったセロトニン5—HT2A受容体拮抗薬を用いた,新しい狭心症治療に関する研究結果を紹介する.
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