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はじめに
睡眠時呼吸障害のうち,上気道の狭窄に基づいて生じる閉塞性睡眠時無呼吸低呼吸症候群(obstructive sleep apnea hypopnea syndrome;OSAHS)は,1990年代に行われた疫学調査によって,成人男性人口の2~4%と極めて頻度の高い病態であることが明らかにされている1).男性に比べて著しく有病率が低いと考えられてきた女性についても,閉経期以降には著しく罹患率が上昇することが確認されている(全体としてみると有病率の性差は3.3:1程度であるという)2).
OSAHSにおいて過眠症状(日中の眠気)と心血管系合併症発現リスクが上昇することから,その治療と予防的な対策の重要性が強調されてきている.しかし,睡眠障害センターが数百(学会などでauthorizeされていないものを含めると1,000を上回るともいわれている)存在する米国に比べて,日本ではOSAHSもしくはその類縁疾患である上気道抵抗症候群3)(upper airway resistance syndrome;UARS,明らかな無呼吸・低呼吸は少ないが,上気道の機械的な刺激によって頻回に覚醒反応を生じ,これによりOSAHSと同様日中の過眠症状を呈するもので,PSGの際に食道内圧を同時記録して呼吸障害関連の覚醒イベントであることを確認しないと診断はかなり困難である)を正確に診断・治療することの可能な睡眠障害専門のセンターの数はまだまだ少なく,多く見積もっても100未満であろうと思われる.
このように医療体制がまだ十分に整っていないにもかかわらず,2003年2月のOSAHSに罹患していた新幹線運転手の居眠り事件以来,診断・治療を希望する症例数は急激に増加してきている(一部過熱気味とも思える節もあるが).このような流れによって,新しい睡眠専門医療機関が設立され患者ニーズが充足されていくものと思われるが,OSAHSをいかに効率よく,しかも確実に診断し,安定した治療成績を上げるかという課題は,臨床家にとって極めて重要なものである.OSAHSの画期的な診断・治療技術革新は今のところないようだが,少しずつOSAHS診療を洗練させるような技術変化と知見が蓄積されてきているようである.
本稿では,これらを紹介するとともに,問題点と将来の展望について述べたい.
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