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降圧療法の目的は脳心腎などの臓器合併症の予防と改善である.これを達成する手段は,血圧を正常化すること(降圧目標140/90mmHg未満)であるが,これによって得られる臓器合併症のリスク低下は脳卒中で46%,冠動脈疾患で14%程度に止まっている.このような,従来の降圧療法では臓器合併症を完全に抑制することができないこと(冠動脈パラドックスともいう)に対する反省から,降圧目標値の見直しや早朝高血圧の治療が注目を浴びている.
疫学調査の結果からは血圧値が低下するほど心血管事故リスクも低下することが示されている.メタアナリシスの結果からも,血圧を降圧療法によって低下させるほど心血管事故リスクが低下することが示されている(降圧は最大の防御である).これらの結果から,降圧目標を高血圧の基準である140/90mmHg未満に止めず,より積極的に血圧を低下させることで事故リスクをさらに低下させることが期待されている.最近のガイドラインをみても,2000年の日本高血圧学会ガイドライン(JSH2000)では,「若年・中年者および糖尿病合併者では130/85mmHg未満とし高齢者ではやや高めに設定する」とされている.さらに蛋白尿1g/日以上の人では125/75mmHg未満を目標にする.一方,2003年の米国合同委員会ガイドライン(JNC 7)でもとりあえず降圧目標値を140/90mmHg未満としながらも,慢性腎疾患または糖尿病を有する患者では130/80mmHgとするなどさらに低い降圧目標値をあげている.さらに同じ2003年に出されたヨーロッパ高血圧学会と心臓病学会の共同作業による高血圧管理ガイドライン(2003 ESH-ESC)でも全ての高血圧患者においては140/90mmHg未満,および忍容性があればより低い値に,そして糖尿病患者では130/80mmHg未満とすることが推奨されている.
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